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今年のノーベル医学生理学賞は、ドイツ・マックスプランク研究所のスバンテ・ペーボ博士に決まった。ペーボ氏はネアンデルタール人の細胞のDNAを解読したほか、近縁の「デニソワ人」を発見した。
篠田謙一著『人類の起源』(中公新書)によると、DNA解析技術の進歩によって古人類学が飛躍的に発展した。その立役者がペーボ氏だ。古い骨のDNAと現代人のそれを比較するなどして、現生人類(ホモ・サピエンス)がどのように世界に広まっていったか明らかになりつつある。
ペーボ氏は、絶滅したネアンデルタール人とホモ・サピエンスが交雑しており、そのDNAを現代人が数パーセント受け継いでいることを明らかにした。
デニソワ人というのは、ロシア南部アルタイ山脈の洞窟で見つかった3万~5万年前の小指の骨のDNA解析で発見された旧人類。このDNAはパプアニューギニアの人々などに引き継がれているという。
ペーボ氏の研究は知的好奇心は掻(か)き立てても現代人の生活とは関係ないようにも思える。だが新型コロナウイルスのパンデミックの中で、ヨーロッパ人がアジア人に比べ重症化しやすいのは、ネアンデルタール人から受け継いだ遺伝子によるものとの研究成果をペーボ氏は発表している。
篠田氏の著書によると、PCR検査でウイルスの有無を調べる方法も同じ技術によるものだ。DNA解析の進歩は、日本人のルーツなど人文研究にも大きく貢献している。



