
かつて山梨県の韮崎大村美術館に取材に行ったことがあった。韮崎市の北西の郊外にあり、山の麓。取材を終えた後、周囲の山々の景色に見とれてしまった。このように贅沢(ぜいたく)な風景が他にあるのだろうかと。
北に八ヶ岳、東に秩父連山と奥多摩、南に丹沢山塊と富士山、南西には南アルプスの山々。中央の盆地を秀麗な山々が取り囲んでいた。その周囲の山々をみな登ってきたが、ここから見たのは初めて。
山梨県は登山家たちが憧れる自然の豊かな県だ。同県が冊子「やまなしハイキングコース100選」を作成して、9月から無料配布したところ、反響が大きく、初版1万冊が3週間でなくなった(小紙10月9日付)。
想定以上の人気で、秋のシーズンに向けて2万部を増刷、配布を再開したという。片道1~2時間で登れる低山を網羅し、モデルコースや危険箇所を載せて「富士山眺望」「やまなみ絶景」「森と渓谷」など六つのテーマ別に分類してある。
山の選定、分類、編集、紹介の仕方が実にうまい。「富士山眺望」では高川山(たかがわやま)(976㍍、大月市・都留市)、思親山(ししんさん)(1031㍍、南部町)、大蔵高丸(おおくらたかまる)(1781㍍、大月市・甲州市)など32の山を紹介している。
「滝が見える」「花を眺める」などキーワードで探すこともできる。県外ではあまり知られてこなかった山々だ。低山にも個性的な魅力がある。登りやすく、危険も多くはない。家族連れや高齢者、初心者には絶好のコースなのだ。



