水の都・バンコク タイから

タイの雨季はおよそ6月から10月までだ。

日本の梅雨のようにしとしと一日中降る雨ではなく、雷の大音響を伴って約30分から1時間程度、バケツどころかドラム缶をひっくり返したようなスコールとなる。

女性的な梅雨に比べ、タイの雨は男性的だ。しかも、雨が上がると青空がのぞいたりするから、タイの雨は「一時間のドラマ」とさえ思ったことがある。その変化の激しさが劇的なのだ。

ただ、今年の雨は中途半端じゃない。雨期末期の10月の雨は、しばしば洪水を引き起こすのだが、地元紙が「20年ぶりの豪雨」と書くほどよく降った。

水の都・バンコクが、本当に水浸しのバンコクに豹変(ひょうへん)した。

それでも地下鉄は動いている。だが地上の出口を出たとたん、膝頭辺りまで水に漬からなければ、歩けないといった冠水場所があちこちできた。

標高1メートルのバンコクは、基本的に上流から流れてきた水が滞りやすい地政学的環境にある。

バイクの運転手は、靴をビニール袋に入れて荷台にくくり付け、サドルの上に足をそろえて乗せ、水を切って走る。まるで水上スクーターに豹変したかのようだ。

こうした土砂降り雨に遭遇したら、移動しようなんて思わないことだ。折り畳み傘なんかでは何の役にもたたないのだから。(T)