W杯パブリックビューイング  仏各都市が次々中止へ

設置費用やカタールの人権懸念

【パリ安倍雅信】中東カタールで開催するサッカーのワールドカップ(W杯)を1カ月後に控え、フランスの大都市は次々にパブリックビューイングを行わないことを表明した。理由はカタールで問題が指摘される移民労働者の死亡事故、インフレによる景気後退とエネルギー危機に見舞われる中、設置費用とエネルギーコストへの懸念も高まっているからだ。さらに11月の開催で寒さの中、街頭で応援する観戦者は多くないとの見方もある。

パリ市は公園や広場にパブリックビューイングのための設備を設置しないことを明らかにしたほか、第二の都市リヨン、マルセイユ、リール、ボルドー、ストラスブール、ランスなども、パブリックビューイングの会場設置を見送ることを決めた。パリ市役所のスポーツ担当者であるラバダン氏は、冬の開催が決定に影響を与えたと述べた。

パブリックビューイング中止は政治的理由から始まった。リール市の左派のオブリ市長が、カタールW杯は「人権、環境およびスポーツの観点からナンセンス」と批判したことが影響し、右派の市長もパブリックビューイングの再検討を行った。カタールではW杯会場や宿泊施設建設で、インドなどからの労働者が過酷な環境で作業を強いられ、死者も出ていると報じられ、問題視されている。

リヨン市は5日、正式にパブリックビューイング会場設置を市として行わないことを発表した。デュセ市長は、理由として「人権への憎悪」「環境異常」を挙げ、八つのスタジアムのうち七つのスタジアムの空調に膨大な費用が掛かり、環境汚染も懸念されるとしている。会場建設中に移民労働者が死亡したことにも言及した。

同市長は、W杯が世界的イベントとして重要なことは認めつつも、カタールのW杯のために「1ユーロも市の予算は使わない」と言明した。ニース、カンヌ、ペルピニャンなどの他の都市は、フランス代表の結果に応じて決定するとしている。