保守系議連が警戒感
に要望書を手渡す玉城デニー知事(右)=9月30日、沖縄県庁.jpg)
沖縄県の玉城デニー知事は9月30日、2期目の任期がスタートした。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対が一丁目一番地の公約としているが、辺野古の埋め立ては着々と進んでおり、「公約違反」の批判は避けられない。そこで、2期目には、国連などの国際社会に訴える作戦に出るが、さっそく一部県民から反感を買っている。(沖縄支局・豊田 剛、写真も)
先住民勧告質問状に明確な回答避ける
故翁長雄志氏から続いている「オール沖縄」県政は、玉城氏の再選で3期目に突入した。30日開会の県議会定例会で、玉城氏は2期目の方針演説を行い、「誰もが希望のうちに喜びを見つけることができる島、幸福を真に実感できる沖縄を目指し、職務に全身全霊で取り組む」と語った。
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2期目の重点施策として、①県経済と県民生活の再生②子供・若者・女性支援施策の充実③辺野古移設反対を含む米軍基地問題――の3点を挙げた。
普天間飛行場の辺野古移設反対を旗頭に結集しているのが、共産、社民、立憲民主などの革新政党や労組で構成される「オール沖縄」勢力だ。辺野古移設に伴う埋め立て工事が進められ、身内からも「公約違反」のそしりが免れない中にあって、辺野古移設反対の世論を味方に付けることを狙って浮上しているのが国際社会へのアピールだ。
玉城氏は当選直後の地元紙とのインタビューで、「国連や国際社会の場に沖縄県民がなぜ、(反対を)訴えているのかを幅広く語っていく」と述べた。9月16日の定例会見、さらに同30日の記者会見でも、「平和を希求する思いを国際社会にしっかり発信していきたい」との考えを示した上で、「国連における発言の機会があれば、ぜひ活用したい」と述べた。
ただ、「具体的な日程やどの場で発信するか検討に入り、現在は情報収集を始めたばかり」で、国連や教育機関を含めた国際社会で辺野古移設に反対する理由を人権と自由と公平性の観点から効果的に意見を発信していきたいと説明した。
辺野古移設をめぐる県と国の対立は翁長県政から続いている。県が国を相手取った辺野古移設をめぐる訴訟は11件あり、係争中の3件を除くと敗訴が4件、和解などで訴訟を取り下げたのが4件だ。訴訟連敗の現実について玉城氏は30日、「これは司法の限界であり、新基地建設を止める手段は国際社会にアピールするしかない」と述べた。
前任の翁長氏は2015年9月に国連人権理事会で演説している。その際、「沖縄の人々の人権や自己決定権がないがしろにされている」と述べ、県民への基地負担の継続と辺野古移設は「人権侵害」に当たると訴えた。
玉城氏は、政府の南西諸島防衛体制の強化にも警戒心を示す。南西諸島の住民を守るために避難シェルターを建設することにも否定的だ。浜田靖一防衛相が28日、沖縄県庁を訪れた際、南西諸島防衛の強化策が話題になると、「沖縄が77年前のように本土防衛の捨て石になってはいけない」と訴え、日中間の交流や外交努力を行うよう「大臣にも尽力してほしい」と要望した。
県は、中国福建省との友好県省締結から今年で25周年を迎えるに当たりイベントを企画している。玉城氏は、「お互いの友好関係を確認しながら、交流や物流、人流について積極的に協力することを確認するための企画を進めている」と明らかにした。
玉城氏の中国に対する警戒感が薄く、反米反基地感情を利用して国連に訴えようとすることに危機感を抱く勢力がある。県内の保守系地方議員で構成される「沖縄の人々を先住民族とする国連勧告の撤回を実現させる沖縄地方議員連盟」(崎浜秀昭会長=本部町議)は26日、県庁で記者会見を開き、「知事が行動を取る前に、県民および県外のウチナーンチュ(沖縄にルーツがある人々)に対して、しっかり説明と賛同を取らないといけない」と指摘した。
同議連は昨年12月、知事に質問状を提出した。「国連の自由権規約委員会が2008年、日本政府宛に沖縄の人々を先住民族として公式に認め、その土地や言語の権利を保護するようにとの趣旨の勧告が提出されていることを承知しているか」との問い合わせについて、「正当な手続きによって国連の委員会の所見が取りまとめられているもの」と認識していると回答した。
また、「沖縄県議会で議論されることなく、議会の意向を完全に無視して国連から一方的に沖縄の人々を先住民族とする勧告が出されることは、議会制民主主義を崩壊させる大きな問題との認識を持っているか」という質問には、「沖縄県では、これまで沖縄県民が先住民族であるかどうかの議論をしておらず、県全体においても大きな議論となっていないことから意見を述べる立場にない」と明確な回答を避けた。
議連は9月26日、先住民族勧告を黙認するとも取られかねない知事の姿勢に危機感を募らせ、「国連に沖縄の基地問題を訴える前に、沖縄県民および県外のウチナーンチュおよび国連の各委員会に対して、正確な情報を提供・説明し、これまでの双方の認識のギャップを解消すること。それができるまでは国連に何も訴えないこと」を求める要望書を県に提出した。その後の記者会見で、崎浜氏は「自らを先住民族とする一部のウチナーンチュと国連だけで沖縄の未来を決めようとしていることを認めることはできない」と訴えた。



