フランスで車の買い替えは大きな議論となっている。理由はフランスでガソリン車とディーゼル車の販売を2040年には終了することを決めているからだ。
今でもパリ市内の住人の6割以上が車を所持しておらず、今後、公共交通機関利用者の急増が予想される。とはいえ、パリを一歩出れば、車なしの生活は考えにくい。長距離運転の多いフランス人には経済性は重要だ。
電気自動車(EV)の普及率がドイツ、英国に次ぐ12・1%のフランスは、今年上半期の増加率が28・7%で、新しい物が普及しにくいフランスとしては優秀な方だ。IT企業で管理職を務める友人のローランは「今は、ガソリン車を乗りつぶすことを決めている」と3年乗っている車は動かなくなるまで乗る覚悟だ。
彼は「ガソリン車は死刑宣告を受けたから中古では売れない。価格の高いハイブリット車は経済的とは思えない」と持論を展開する。友人の一人がEVのテスラ車に乗り換えた。「あれは見栄(みえ)だよ」と一蹴。実は欧州でEV普及率が20%を超えているのは北欧など3カ国だけ。また「EV車の技術は発展途上、ハイブリッド車の中古売却価格は心配だ」という友人もいる。
そこに今度はエネルギー危機が襲っている。70%弱の電力を原子力に依存するフランスは保有する56基中32基の原子炉が点検停止中で、供給量が2割落ちている。EV乗り換え人口が急増すると電力不足も懸念される。
とはいえ、フランス人のカーボンニュートラル(脱炭素化)への意識は高い。特に今夏の熱波襲来による異常気象が身に染みているのは確かだ。(A)



