
浜田靖一防衛相は米ハワイでオースティン米国防長官、オーストラリアのマールズ国防相と会談し、中国の覇権主義的な行動を念頭に国際秩序を維持するため安全保障戦略を擦り合わせる方針で一致した。
中国を抑止するには、日米豪3カ国の安全保障協力の拡大が不可欠だ。
「国際秩序の根幹揺らぐ」
3氏は、8月上旬に中国が発射した弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾したことを「強く非難」した。その上で「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」ことを強調した。
中国は太平洋の島嶼(とうしょ)国で急速に存在感を高めている。米国の影響力を弱めて軍事バランスを変え、豪州を封じ込めて台湾侵攻の環境を整える狙いからだ。「台湾有事は日本有事」であり、こうした中国の動きは日本の安全保障を損なう恐れもある。
会談では、中国を念頭に3カ国の防衛協力を強化していくことで一致。共同訓練や防衛装備・技術協力の促進についても確認した。これらを対中抑止につなげるべきだ。
浜田氏は中国のほか、ウクライナを侵略したロシアや核・ミサイル開発を進める北朝鮮を名指しして「国際秩序の根幹が揺らいでいる」と指摘。秩序を守る日米豪の緊密な連携が「以前にも増して重要だ」と呼び掛けたのは的を射ている。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東・南部4州の「併合」を宣言した。国際法を無視して他国の主権と領土を侵害する暴挙である。
国連安全保障理事会は、親露派が併合に向け4州で強行した「住民投票」を非難する決議案を採決に付し、米英仏など10カ国が賛成したが、ロシアが拒否権を行使し廃案となった。安保理を機能不全に陥らせているロシアに、常任理事国の資格がないのは明らかだ。
先進7カ国(G7)はロシアに対する追加制裁の方針を表明した。G7と民主主義の価値観を共有する豪州も、対露包囲網の強化に協力する必要がある。
一方、北朝鮮は9月末から10月初めまでの1週間で4回にわたって弾道ミサイルを発射した。これは過去にないペースだ。
北朝鮮は9月、核兵器使用に関する法令を定め、核先制攻撃も辞さない構えを強めている。近く7回目の核実験を行う可能性も指摘されるなど、北朝鮮の核とその運搬手段であるミサイルの脅威は増大している。日米豪の連携強化で北朝鮮を牽制(けんせい)すべきだ。
地域の安定に尽力を
インド太平洋地域および国際社会が直面するさまざまな課題の解決には、2国間および多国間の枠組みを組み合わせてネットワーク化することが重要である。日米豪とインドとの4カ国による「クアッド」と、米豪と英国との安保枠組み「AUKUS(オーカス)」とのネットワーク化も求められよう。
日本は故安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想を継承し、価値観を共有する民主主義諸国と共に地域の安定や繁栄のために尽力すべきだ。



