
【サンパウロ綾村悟】南米の大国ブラジルで2日、現職の保守派ジャイル・ボルソナロ大統領(67)の任期満了に伴う大統領選挙の第1回投票が実施される。各政党から12人が立候補しているが、実質的に再選を目指す与党・自由党(PL)のボルソナロ氏と左派・労働党(PT)のルラ・ダシルバ元大統領(76)の一騎打ちとなっている。
ダッタフォーリャ社が9月29日に発表した世論調査では、棄権票や白票などを除く有効票の計算でルラ氏が50%に迫る支持率を得ており、30日の決選投票を待たずに当選する可能性も出てきた。ボルソナロ氏は支持率36%、3位以下は1桁台にとどまっている。
ボルソナロ氏は、ソーシャルメディアでルラ氏の倍近いフォロワーを持つなどネット上で人気が高く、実際の投票では世論調査以上の票を得る可能性もある。
今回の選挙は、ブラジル国内をかつてないほどの分断に追い込んでいる。ボルソナロ氏とルラ氏の支持者による暴力事件が相次ぎ、殺人事件まで起きている状況だ。
ボルソナロ氏は、昨年から採用されている電子投票システムに不正行為の可能性があると主張し、紙の投票に切り替えるよう主張してきた。敗北した場合には軍の介入を示唆するような発言も行っており、米国のカーターセンターなど国際的な選挙監視団体が現地入りしている。
また、ボルソナロ氏には保守派を中心に熱狂的な支持者が多く、敗北を認めずデモなどの示威行動を行うことも懸念されている。
近年、南米では左派政権が次々と誕生しており、ルラ氏が当選すれば、南米12カ国中9カ国が左派政権となる。背景には、新型コロナウイルスの流行で拡大した貧困や経済格差があり、ルラ氏も貧困対策を最優先課題とする公約を打ち出している。
ルラ氏は、在任時に資源ブームを背景とした経済成長と貧困層への幅広い援助で支持を集め、2011年の退任時には80%を超える支持率を得ていたカリスマ政治家だ。一方で、当時の労働党政権はブラジル史上最大の汚職事件も引き起こした。18年大統領選挙でボルソナロ氏が当選した背景には、軍出身の同氏が汚職撲滅と財政規律の強化による経済再生を強く打ち出したことがある。
今回の大統領選挙は、中南米地域で中国やロシアの影響力が強まる中で行われる。アマゾン熱帯雨林の保護問題も世界的な関心の的となっており、過去にないほど内外の注目を集めている。



