【社説】少子化加速 家族重視の価値観浸透させよ

今年上半期(1~6月)の出生数は、前年同期比2万87人(5・0%)減の38万4942人になったことが、厚生労働省の人口動態統計(速報)で分かった。2000年以降最少で、初めて40万人を下回った。

出生数が過去最少更新か

6月に公表された21年の人口動態統計によると、同年の出生数は1899年の統計開始以来最少の81万1604人。1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す合計特殊出生率は1・30だった。

今年下半期も上半期と同じ傾向だった場合、出生数は過去最少を更新する可能性が高い。しかも速報には国内在住の外国人や海外にいる日本人が含まれるが、今後公表される確定数は日本に住む日本人だけを対象とするため、速報より少なくなる傾向があるという。

国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した将来推計人口では、出生数が81万人台に減少するのは30年頃としていた。少子化が加速したのは新型コロナウイルス感染拡大の影響があるとしても、危機的な状況であることに変わりはない。

ただ夫婦の平均的な子供の数はこの40年間、ほぼ2人で推移している。少子化が進んだのは、非婚化が大きな原因だと言えよう。21年の婚姻数は戦後最少の50万1116組に落ち込む一方、20年の生涯未婚率(50歳までに一度も結婚したことのない人の割合)は、男性28・3%、女性17・8%に上っている。

最近は「自分のお金や時間を自由に使いたい」「家族を養う責任を負担に感じる」などの理由で、結婚したくないと考える人も少なくないようだ。少子化を克服するには経済的な支援の充実などと共に、特に若い人たちに結婚や育児の大切さを伝え、家族重視の価値観を浸透させることが重要になる。

また21年の出生率を都道府県別で見ると、最も高いのが沖縄の1・80で、最低が東京の1・08である。一般的に地方では、親族や地域が育児を支えてくれることが多い。都市部よりも育児をしやすい地方への移住を促していくことも少子化対策の一つだと言える。

総務省によると22年1月1日現在、東京の人口の増加幅は1万2841人で、前年(6万501人)から大きく縮小した。コロナ禍でテレワークが進み、郊外に移住する動きがあることが背景にあるとみられる。

岸田文雄首相はデジタル技術の活用を通じて地域活性化を目指す「デジタル田園都市国家構想」を掲げている。ただ東京一極集中を打破するには、首都機能移転などの大胆な施策も求められよう。国が率先することで企業の本社機能移転なども促進し、少子化克服につなげる必要がある。

危機感持って対策を

少子化が進めば人口も減少する。日本の人口は昨年、初めて60万人以上減った。ただ地方では過疎化が深刻な状況となっているが、都市部では進学や就職などで人が集まるため、少子化や人口減少に対する危機感が薄い面がある。地方の衰退は都市部の衰退につながることを自覚し、官民挙げて少子化対策に取り組むべきだ。