北朝鮮が日本海に向け短距離弾道ミサイル1発を発射し、ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下した。
北朝鮮は今月、核兵器使用に関する法令を定め、核先制攻撃も辞さない構えを強めている。日本は米韓両国との連携を深めて抑止力を強化すべきだ。
核先制攻撃を辞さず
ミサイルは最高高度約50㌔、通常の弾道軌道だとすれば約400㌔飛行したと推定される。変則軌道で飛行した可能性もあるという。
北朝鮮の弾道ミサイル発射は短距離8発を発射した6月以来だ。韓国南東部の釜山には、米原子力空母「ロナルド・レーガン」が韓国との合同演習のため約5年ぶりに入港しており、これに反発した可能性もある。
地域の安全を脅かすミサイル発射は断じて容認できない。岸田文雄首相が「国連安保理決議に反するもので強く非難する」と述べたのは当然の抗議だ。
北朝鮮の最高人民会議(国会に相当)は今月、核兵器の目的や使用基準を定めた法令を採択した。法令は、金正恩朝鮮労働党総書記が兼任する国の最高ポストの国務委員長が「核兵器に関する全ての決定権を持つ」と規定。国家指導部などへの攻撃が迫った時には、核での先制攻撃を辞さないとするものだ。
一方、北朝鮮は多様なミサイルの開発を進めており、既存のミサイル防衛システムでは迎撃が難しくなる。北朝鮮の核やその運搬手段であるミサイルの脅威は増大しつつある。
こうした脅威に対処する上で日本にまず求められるのは、防衛力の抜本的強化である。ミサイルに関しては北朝鮮だけでなく、8月の台湾周辺での軍事演習でも見られたように中国への対策も重要課題だ。敵のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有が急がれる。
今月末には「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の初会合が開かれる。年末の国家安全保障戦略など3文書の改定や防衛費の国内総生産(GDP)比2%への増額などに向け、抑止力強化に資する議論を求めたい。
これとともに、米韓両国との連携を強化して北朝鮮に対峙(たいじ)する必要がある。浜田靖一防衛相は米ワシントンでオースティン国防長官と会談した際、反撃能力の保有などについて説明し、オースティン氏は「強い支持」を表明した。同盟国である米国とは、しっかりと意思疎通を行うことが重要だ。ハリス米副大統領はきょうから日本と韓国を訪問する。
米ニューヨークでは日米韓外相会談が開かれ、共同声明で北朝鮮が7回目の核実験を実施した場合に「国際社会は力強く毅然とした対応を行う」と牽制(けんせい)した。米韓両国はきょうから合同演習を行うが、日本も両国との安全保障協力を進めなければならない。
徴用工問題解決を急げ
岸田首相は韓国の尹錫悦大統領と「懇談」を行い、懸案の元徴用工問題について政府間協議を加速することで一致した。尹氏は早急な解決に向けて指導力を発揮し、日本との連携強化に尽力すべきだ。



