【ウィーン小川敏】ロシアのプーチン大統領は21日に第2次世界大戦後では初めてとなる部分動員令を発令した。30万人までの予備兵が招集される予定だ。対象となるのは、過去に兵役に就いて武器の使用に精通し、戦闘経験もある国民で、年齢は18歳から59歳まで。
国民の間では招集状が届く前に国外に脱出する動きがみられる。ロシアで人気の航空券予約サイトによると、トルコのほかアルメニア、ジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタンなど旧ソ連諸国への直行便はすべて満席。これらの国では、ロシア人はビザなしで入国できる。航空券の価格は軒並み急騰しているという。
徴兵を拒否すれば、学生は大学から追放され、労働者は会社から解雇、最悪の場合、数年間の刑務所送りになる。若い世代を中心に「出ロシア」が広がり、頭脳流出が懸念され始めている。
プーチン氏は部分動員令を発した際、「必要となれば大量破壊兵器の投入も排除できない」と強調し、「これはブラフ(脅し)ではない」と警告した。
オーストリア・インスブルック大学のゲルハルド・マンゴット教授は21日、オーストリア放送のインタビューで、「ウクライナ軍の攻勢を受け、戦局が厳しくなった場合、ロシアが戦略核兵器を居住地でない場所で爆発させ、威喝する可能性は考えられる」と分析した。
マンゴット氏は一方で、「ロシア軍がウクライナ内の占領地を失うようだと、クレムリン宮殿内でプーチン氏に蜂起する者が出てくるかもしれない。クーデターだ」と指摘。「その場合、新しい指導者はプーチン氏の戦争を継続する考えはないだろうから、停戦交渉に応じるだろう。ただし、このシナリオは近い将来現実化するとは考えられない」との見通しを示した。



