政府の物価高対策に「独断」「場当たり」などと批判ばかりの左派系紙

UnsplashDawn McDonaldが撮影した写真

補助金継続やむなし

10日付読売「苦しい家計の支援を効果的に」、朝日「見過ごせぬ独断と迷走」、日経「物価高対策がバラマキになっては困る」、11日付産経「負担軽減へ円滑な実施を」、13日付本紙「日銀は金融政策を転換せよ」、15日付毎日「『場当たり』繰り返すのか」、16日付東京「苦しい家計救えるのか」――。

政府が決定した追加の物価高対策について各紙社説の見出しである。本紙は「止まらぬ円安」についてのものだが、「物価高の主要因の一つが円安進行」としているので、小欄に含めて取り上げたい。

列挙した通り、厳しい語調なのが左派系紙の朝日、毎日である。

朝日が言う「独断」とは、巨額の税金を投入する対策の予算を予備費で支出し、野党が要求する臨時国会を開こうとしないこと。また「迷走」とは、ガソリン補助金の期限が3回目の延長となり、延長に合わせて補助額の上限を段階的に引き下げることが検討されたが、土壇場で覆され、出口戦略が示されなかったことを指す。

確かにガソリン補助金については、保守系紙でも「巨額の支出を長く継続するのは現実的とは言えない」(読売)、「(段階的に縮小する案を見送ったのは)納得できない。補助金による価格抑制は激変緩和の位置づけだったはずだ。市場機能をゆがめる補助金の長期化は避けるべきだ」(日経)などと問題視しており一理はある。朝日が言うように「省エネや脱炭素化の動きにも逆行しかねない」こともあろう。

ただ、ガソリン価格が高止まりしている現状から、段階的縮小は別にしても、補助金の継続はやむを得ない面もあるのではないか。

これに関しては、読売が「燃料を多く使う運輸業者やビニールハウス農家、寒冷地の家庭などへの重点的な支援に転換していくべきでないか」と指摘する。貴重な提案である。

「独断」批判は一面的

朝日の言うもう一つの「独断」であるが、同じ左派系紙の毎日や東京も、国会での審議を経ないことを「財政民主主義を空洞化させる」(毎日)と批判、対策費を予備費でまかなうことにも「異議を唱えたい」(東京)とする。

しかし、住民税非課税世帯への5万円給付やガソリン補助金など追加対策は、実施が早いに越したことはない。

年初から約30円もの急激な円安の進行もあり、食品の値上げは秋以降も続いて、9月以降に平均140円の円安水準が続けば、今年度の家計負担額は7万8千円程度増えるというシンクタンクの試算もある。

産経が指摘するように、「物価高対応の緊急性が高いことを十分に認識しておかなくてはならない」わけで、「新型コロナ禍で落ち込んだ経済の回復途上で消費が落ち込む事態を避けるためにも、適切な対応が求められる」(産経)からである。左派系紙の「独断」批判は、緊急性の認識を欠いた一面的な見方である。

円安是正へ言及僅か

住民税非課税世帯への給付は各紙概ね妥当とするものの、「高齢者が7割を占め、所得は少なくても資産を持つ人がいる。一方、対象外でも、低賃金の非正規雇用のため、困窮している人は多い」(毎日)、「所得だけで線引きすると、国民の不公平感が高まりかねない」(日経)などと左右問わず問題点を指摘。

特に日経は、マイナンバーに口座情報をひも付け、行政機関が収入や金融資産の情報を把握できるようにするなど、支援が要る人を見極めて迅速に給付する仕組みが一刻も早く必要と訴えた。

前述した物価高の一因である円安の是正について言及したのは少ない。読売が「政府・日銀は為替市場の動向をこれまで以上に注視し、金融緩和を維持する理由について、丁寧に説明しなければならない」と指摘するのみで、見出しの通り、金融政策の転換を求めたのは本紙だけだった。(床井明男)