
「科捜研の女」というテレビのミステリー番組がある。現在、放映されているのは再放送だが、京都府警を舞台に、法医研究員の女性が科学を武器に犯罪に立ち向かう姿を描いている。
長寿番組で、興味をそそるのは、題名にあるように科学技術を駆使して犯行現場に残された証拠を分析していく手法だ。フィクションだが、科学技術を用いるさまざまな手法に驚かされる。
ところで、安倍晋三元首相の暗殺事件に関しては、事件そのものの解明が十分になされないまま、メディアも追及しないままで、2カ月半も過ぎてしまった。これは何とも奇妙な現象だ。安倍元首相の死因は失血死だという。
奈良県警が発表した司法解剖の結果によれば、左上腕部から撃ち込まれた弾が、鎖骨下の左右動脈を破壊したことによるもの。心臓に損傷はないと発表した▼だが、奈良県立医科大付属病院の担当医による記者会見では、心臓に大きな穴があり、弾は首から入って心臓に到達したという。画像では安倍元首相が崩れ落ちる時、手で胸を押さえていた。弾は見つかっていない。
両者で共通するのは弾の穴の数だ。左上腕部の他に右首に二つ。銃声音を解析した人の話によれば3発あった。2発の爆発音と1発の高パルス音。ほかに狙撃者がいたのでは、という仮説もある。「科捜研の女」は奈良県警にはいなかったようだ。条痕など銃の検証も発表されていない。こうした謎は闇に葬られてしまうのだろうか。



