【上昇気流】(2022年9月16日)

読書

読書の秋である。最近の古書価の暴落は、本好きの人にとっては歓迎すべきことだ。しかし安価な分、ついつい買ってしまって、気流子のようにいわゆる「つんどく」状態となる本も少なくないだろう。

外山滋比古のロングセラー『思考の整理学』(ちくま文庫)に「つんどく法」というのがある。つんどくの弁護が書かれているかと思いきや、外山氏の場合は本を積んでおくだけで読まないことではない。本を積んでこれを一気に読破することなのだ。

「集中読書、集中記憶によって、短期間、ある問題に関しての博覧強記の人間になる」ことなのである。論文や原稿を書いた後は忘れてしまうが、その人の深部の興味、関心とつながっているものはいつまでも残るという。

さらに、そういう「忘れられなかった知見によって、ひとりひとりの知的個性は形成される」と言う。つんどくというより「つん読破」ともいうべき、かなり高度な知的方法論の展開である。

とはいえ本来の(?)つんどくにも効用がないではない。買ってすぐには読み出せないが、何かの必要が起きた時に読むと、集中力や理解度がダントツに高まるということがある。今が読み時と思った時に手元に本があると大助かりだ。入手困難な本であればなおさらである。

積まれた本からは「早く読んで」という声も聞こえてくる。いささか貧乏くさいが、買ったのだから読まないともったいないというのも読書の促進剤となる。