
円相場は7日の東京外為市場で1¥外字(93d9)=144円台と約24年ぶりの円安水準を更新するなど、円安に歯止めがかからない。背景にあるのは日米金利差の拡大である。日本経済は復調傾向にあり、大規模緩和は必ずしも必要でなくなっている。日銀は大規模緩和を見直し、金融政策の転換を表明すべきである。
1¥外字(93d9)=140円台続く
昨年末に1¥外字(93d9)=115円台だった円相場は、今年に入って円安が進行し、昨年末に比べて30円弱、20%も安くなっている。
米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制へ金融引き締めに積極的に動く中、大規模緩和を続ける日本との金利差拡大が市場で強く意識され、ドルが買われ、円が売られやすくなっているのである。
これまでの円安により、特に食品業界では燃料価格の上昇やロシアのウクライナ侵攻による原材料の高騰も加わって年初から値上げが相次ぐ。
帝国データバンクによると、値上げ品目は年内に予定を含め2万を突破したといい、最近の140円を超える円安でさらに再値上げが必至の情勢になり、家計への負担が一段と重くなりそうである。
政府は、住民税非課税世帯に5万円を給付する物価高への追加策を決定。また、ガソリン補助金の年末までの期限延長、輸入小麦の政府売り渡し価格の10月以降の据え置きなどを新たな経済対策に加える方針だ。
これらは物価高による消費者への打撃軽減のために当然の対応であるが、あくまで対症療法である。物価高の主要因の一つである円安の進行阻止へ直接的な対処が必要である。
急速な円安進行に対し、財務省と金融庁、日銀の3者が8日に会合を開催。神田真人財務官が会合終了後に「明らかに過度な変動だ」「このような動きが継続すれば、あらゆる措置を排除せず」と述べ、市場の動きを牽制(けんせい)したが、円は143円台後半の小幅上昇にとどまった。
9日には黒田東彦日銀総裁が岸田文雄首相との会談後、「急激な為替の変動は不確実性を高め、好ましくない」と語り、円は142円台前半まで戻したが、市場では円安基調は変わらないとの見方が多い。
口先介入や為替介入が効果を挙げるには米国を含め各国との協調が欠かせないが、中央銀行の多くがこぞって利上げに動く中、大規模な円買い・自国通貨売りは現実的に難しいと市場に見透かされているからである。
まずもって、日銀自体が金利差をこれ以上広げないといった強い意思表示、すなわち大規模緩和を見直す金融政策転換を表明することが大事である。
金利上昇による景気への悪影響懸念はあるが、いきなり政策金利を引き上げるのでなく、現在のマイナス短期金利、ゼロ長期金利を廃止し、FRBのこれまでの政策を参考に量的緩和の段階的縮小を進めるのである。
実質賃金マイナス解消を
幸い、4~6月期の国内総生産(GDP)が改定値で設備投資の伸び幅拡大などにより上方修正された。景気は内需主導で復調しつつある。物価上昇を抑えつつ賃上げを進め、実質賃金のマイナスを解消したい。



