ロシアは東部軍管区で4年に1度の大規模軍事演習「ボストーク(東方)2022」を実施し、中国などが参加した。
中露両国には演習を合同で行うことで、共通の仮想敵である米国などを強く牽制(けんせい)する狙いがある。要警戒だ。
前回よりも規模縮小
2018年のボストークには約30万人が参加した。今回は5万人以上である。ウクライナ侵略の影響で、規模の縮小を余儀なくされたと言える。それでもプーチン大統領が視察することで、ウクライナや後ろ盾の西側諸国への強硬姿勢をアピールした形だ。プーチン氏は核弾頭搭載可能な弾道ミサイル「イスカンデルM」の発射も視察した。
ボストークには対米で共闘する中国が参加した。昨年10月の衆院選期間中には中露の軍艦計10隻が日本列島を一周し、今年7月の参院選の際も中露の軍艦が沖縄県・尖閣諸島周辺の日本の接続水域を航行するなど、最近は日本周辺で両国の共同行動が目立つ。
22年版防衛白書は、今年5月の中露爆撃機の共同飛行が日本、米国、オーストラリア、インド4カ国の連携枠組み「クアッド」首脳会議の開催当日に実施されたことを指摘。中露の軍事活動が両国の信頼醸成を主眼とするものから「日米欧を含む国際社会に中露の協力を『戦略的連携』として広くアピールするものへと拡大・変化している」と記述している。中露の連携強化に警戒が必要だ。
ボストークには、中露主導の上海協力機構(SCO)加盟国のインドも参加した。制裁で国際的に孤立するロシアは近年、インドとの関係を重視し、クアッドにくさびを打ち込もうとしている。日米豪はインドとの防衛協力を一段と強化すべきだ。
看過できないのは、ボストークの一環として北方領土の択捉島と国後島で演習が行われたことだ。両島では敵の上陸を想定し、無人機も活用しつつ砲兵部隊が撃破する演習に成功したとされる。演習のあった3日は、ロシアで対日戦勝を祝う「第2次大戦終結の日」に当たる。
プーチン政権は20年の憲法改正で領土割譲を原則禁止したほか、今年3月には日露平和条約締結交渉の中断を表明し、日本人と北方領土住民による「ビザなし交流」に関する合意も一方的に破棄した。しかし北方領土は日本固有の領土であり、ロシアが勝手に演習を実施することは断じて容認できない。
この地域はロシアにとっての要衝だ。北方四島の内側にあるオホーツク海には、米本土を射程に入れた戦略核ミサイル搭載の原子力潜水艦が潜んでいる。国後、択捉両島には北海道東部まで射程に入れる地対艦ミサイルが配備されている。北方領土における演習は日米を念頭に、軍事拠点化が進んでいることを誇示したものだと言えよう。
民主陣営は抑止力向上を
中露の軍事協力が進めば、中国による台湾侵攻の際にロシアが何らかの形で側面支援する事態も考えられる。クアッドや欧州、韓国、台湾など民主主義陣営は連携を深め、ロシアに侵略されているウクライナを支援するとともに抑止力向上に力を入れなければならない。



