
【ワシントン山崎洋介】バイデン米大統領は1日、ペンシルベニア州フィラデルフィアで演説し、トランプ前大統領とその支持者が民主主義の脅威だとして厳しく非難。11月の中間選挙に向け、トランプ派への批判をエスカレートさせた。一方、共和党側は、バイデン氏が米国の分断を煽(あお)っているとして強く反発している。
バイデン氏は、テレビ視聴者が多い夜の「プライムタイム」に行われた演説で、トランプ氏やそのスローガンである「MAGA(米国を再び偉大に)」に同調する支持者らを批判。昨年1月の議会乱入事件や、トランプ氏への家宅捜索をめぐり連邦捜査局(FBI)事務所への襲撃が起きていることなどに触れ、「現在、起きているあまりにも多くのことが、正常ではない。ドナルド・トランプ氏とMAGA共和党員は、わが国の根幹を脅かす過激主義を象徴している」と訴えた。
バイデン氏はまた、「すべての共和党員が彼らの極端なイデオロギーを受け入れているわけではない」としつつ、「今日の共和党がトランプ氏とMAGA共和党員に支配され、威圧されていることは間違いない。このことは、わが国にとって脅威だ」と主張した。
同州は、中間選挙の上院選における接戦州の一つ。バイデン氏は中間選挙が約2カ月後に迫る中、トランプ氏だけでなく、その支持者も含めた批判へとエスカレートさせており、先週の演説では、トランプ派の思想を「半ばファシズム」だと断じた。トランプ派を標的にすることにより、共和党穏健派や無党派層を取り込む狙いがあるとみられる。
しかし、昨年1月の就任式で「すべての米国人にとっての大統領となる」と誓ったバイデン氏が、実際にはむしろ分断を助長させてきたとの見方も広がっている。最近発表された調査会社ユーガブの世論調査によると、回答者の66%がバイデン政権発足以来、国の分断が進んだと回答、63%が今後さらに分断が進むと予想している。
共和党下院トップのマッカーシー院内総務はバイデン氏の演説に先立ち、同州で演説し、「バイデン大統領は、米国人を分断し、貶(おとし)め、蔑(さげす)むことを選択した。単に同氏の政策に反対したという理由からだ。それはリーダーシップではない」と批判。その上で「バイデン氏が演説でまず初めに言うべきことは、(トランプ氏を支持する)数千万人の米国人をファシストと中傷したことを謝罪することだ」と要求した。



