【上昇気流】(2022年9月3日)

防災無線スピーカー

「とんとん とんからりと隣組」――。これをメロディーで口ずさめる方はなかなかの年配者だろう。もう少し若い世代であれば「ド・ド・ドリフの大爆笑」はどうだろう。前者は昭和初期の戦時歌謡「隣組」、後者はコント集団「ザ・ドリフターズ」のテレビ番組オープニングソング。原曲は隣組だ。

目下、防災週間(~5日)の最中だが、この時期が来ると隣組が思い浮かぶ。戦時下に120万組が組織され、統制物の配給や空襲に際しての防火活動などを担った。

戦後、地域に自主防災組織づくりの話が持ち上がると、共産党は決まって「戦前の隣組復活」だと難癖を付けた。とばっちりを食ったのは神戸市民だ。

革新市政が長く続いたため防災組織づくりが進まず、1995年の阪神大震災当時の組織率は1割未満。震災では多くの人が倒壊家屋に閉じ込められ、隣近所の人たちが助けようとしたが、素手では叶(かな)わず6000人以上が亡くなった。

それを教訓に東京都では「防災隣組」づくりを奨励している。現在、全国では約17万の自主防災組織がつくられ、全国民の8割以上を網羅している。ところが、高齢化や新型コロナウイルス禍で活動が鈍っていると聞く。ここら辺りで気を引き締めたいものだ。

歌の隣組には「互いに役立つ用心棒、助けられたり助けたり」とあり、ドリフは「揃(そろ)ったところで始めよう」と陽気に呼び掛ける。そんなノリで自主防災組織を活性化してみてはどうだろう。