ペトロロンダリング、戦禍で稼ぐ中印 制裁ロシア産原油、廉価で輸入

自国で精製、原産地隠し輸出?

インドのモディ首相(中央)=2021年12月21日、北部アラハバード(AFP時事)

ロシアのウクライナ侵略後、ロシア産原油は欧米から輸入禁止などの経済制裁を受けたものの、輸出量は侵略前の去年を上回っている。ロシア産原油の受け皿になっているのは中国とインドの石油会社。廉価なロシア産原油を大量に輸入し、自国で精製した石油を高騰が続く欧米市場へ輸出している模様だ。精製過程で原油の原産地を証明するのは難しく、ロシア産原油を石油製品に精製して輸出する「ペトロロンダリング(原油洗浄)」が、制裁措置の抜け穴に利用されつつある。(池永達夫)

ロシアの原油輸出は、西側諸国のロシア経済制裁が始まった3月に急減したものの、わずか1カ月で回復。4月のロシア原油総輸出量は、侵略以前の水準となる2億4300万バレルに達した。

ロシア産原油を主に受け入れているのは中国とインドの石油会社。制裁下の廉価なロシア産原油を輸入して、ガソリンや軽油、その他の化学物質に精製して自国での消費だけでなく、海外市場にも輸出して外貨を稼いでいるとされる。

原油は調達国別にタンク貯蔵されるわけではなく、厳密に原油の輸入元を追跡するのはほぼ不可能だ。また、精製過程で原油の原産地を証明するのは難しく、対ロシア経済制裁の抜け穴になりつつある。

ロシア産原油を積んだタンカーが追跡をかわすため、GPS(衛星航法システム)のスイッチを切って運航するケースも急増している。積載した石油を秘密裏に別の船に積み替える「瀬取り」方式も取られている。「瀬取り」場所は主に地中海や北海、西アフリカ沖などの公海だ。国際制裁を受けている北朝鮮やイランなどが、国際監視網をかいくぐり石炭や石油取引をする際、しばしば使われる方法でもある。

現在、ロシアにとって最大の原油輸出先は中国だ。

中国税関総署が先月20日公表した7月のロシア産石油輸入量は5208万バレル。前年同月比7・6%増で、3カ月連続で国別首位だった。精製業者が割安なロシア産の購入を強化した。中国のロシア産原油輸入が急増したのは5月、前年同月比55%増と大幅に増えた経緯がある。

一方、インドのロシア産原油輸入量は5月、前年同月比8・1倍の2376万バレルと急増し過去最高記録に達している。6月は同4・2倍の2056万バレルだった。

またインドの石油精製製品輸出は今春以降、例年より欧州で3割以上、米国で4割以上増えている。

ただ7月に入ると少々、風向きが変わってきている。インドの7月の原油輸入は、輸入量全体が減少し、ロシアからの輸入も今年3月以来初めて減少。イラクからの輸入が最大となり、ロシアは2位だった。3位のサウジアラビアからの輸入が前月比25・6%増の急増となっている。サウジアラビアは秋の中間選挙を控えたバイデン米大統領からの原油増産の要請を受け入れ、サウジ産原油が廉価となり価格面での国際競争力が増している。

すかさずそのチャンスを見逃さないインドの実態を見ると、ロシア製兵器への依存度が高いインドとはいえ、ロシアを政治支援する意向は皆無で、あくまでビジネスベースで動いている実態が浮かび上がる。

北朝鮮から石炭を輸入したり、イランから原油を輸入したりと中国の制裁破りは国家戦略としてやっているきらいがあるものの、インドの場合はあくまでビジネスライクといっていい