【パリ安倍雅信】ドイツが嗜好(しこう)用大麻使用の合法化の準備を進める中、フランスでも政治討論が活発化し、賛成派と反対派の激しい対立が続いている。賛成派は大麻の密売人の根絶、警察が他の犯罪に多くの人材と予算を割ける等のメリットを挙げる中、反対派は、犯罪や交通事故発生率の増加を懸念している。
フランスでは約500万人が不定期に大麻を使用しており、大麻合法化を求める人々は少なくない。全国で20万人が大麻密売に関わってるとみられ、その収益が犯罪組織を支えているとみられている。そのため合法化されれば、管理しやすくなり、犯罪組織の弱体化にもつながると指摘される。
フランスは大麻取り締まりに厳しい法律が存在する一方、大麻消費量が最も多い国としても知られる。大麻は1970年から禁止されており、2022年8月10日に仏日刊紙ルモンドが開催したフォーラムで、31人の上院議員のグループが、大麻合法化法案を提出することを約束した。「フランス人は、いわゆる嗜好用大麻の消費について話し合う準備ができている」としている。
欧州全体で不定期の大麻使用が確認されているのは2200万人。オランダでは、1976年以降、嗜好用大麻の使用が特定の条件下で認可され、2019年にはルクセンブルクが非医療大麻の法的地位を変更すると発表した。
反対派は大麻合法化に踏み切った米コロラド州の例を挙げ、殺人(10%増)、暴行を伴う強盗(6%増)、レイプ(7・2%増)など犯罪が大幅に増加した例を挙げている。さらに同州では大麻市場全体の約30%を占めるマリフアナの闇市場が存続しており、犯罪組織の弱体化につながっていないとの指摘もある。大麻合法化と同時に他の違法薬物を取り締まる法律を強化すべきだという意見もある。
また、うつ病や自殺リスクの発生源ともいわれている。大麻禁止の支持者であるルーアン大学医科薬学部のジャン・コスタンタン名誉教授(米国医学アカデミーのメンバー)は、「大麻の消費は、統合失調症や他の精神病性障害を発症するリスクなど、年少者の健康を危険にさらす」と指摘している。



