日本維新の会は大阪市内で開いた臨時党大会で代表選の投開票を行い、馬場伸幸共同代表を新代表に選出した。
先の参院選では、維新のほか自民、公明、国民民主各党など憲法改正に前向きな「改憲勢力」が、非改選も含めて改憲発議の条件となる3分の2(166議席)を維持した。維新は改憲の機運を高めるべきだ。
馬場氏を新代表に選出
代表選には馬場氏のほか、足立康史国会議員団政調会長、梅村みずほ参院議員が立候補し、投票の結果、馬場氏が有効投票数の約8割を獲得。馬場氏はあいさつで「しっかりと改革を前に進め、維新を自民党と対峙(たいじ)できる政党に育てていきたい」と抱負を述べた。与党の政権運営に緊張感を持たせるには、優れた政権担当能力を持つ野党の存在が不可欠だ。
参院選の比例代表で、維新の得票は立憲民主党を上回った。維新に対する期待の大きさを示すものだと言えよう。立民に代わって野党第1党となるには、党内論議を深め、さらに政策を磨くことが求められる。
維新は参院選の公約として、外交・安全保障分野では「防衛費の国内総生産(GDP)比1%枠を撤廃し、2%を目安として増額することを目指す」「『積極防衛能力』の整備を図る」などを掲げた。台湾侵攻を狙う中国や、ウクライナを侵略したロシア、核・ミサイル開発を進める北朝鮮などの脅威増大で、日本を取り巻く安保環境は厳しさを増している。こうした現状に対処する上で安保体制強化を目指す内容は評価できる。
また、改憲については「平和主義・戦争放棄を堅持した上で9条に自衛隊を規定する」「緊急事態条項を創設する」などとしている。これも日本の重要課題に取り組む姿勢を示したものだと言えよう。自民などとの議論を通じ、改憲原案の国会発議実現を目指してほしい。
改憲を悲願としていた安倍晋三元首相が、参院選の応援演説中に凶弾に倒れた。誠に残念なことだ。参院選の結果を受け、本来であれば各党は安倍氏の遺志を継いで改憲への動きを活発化させなければならないところである。
ところが事件の容疑者が、母親が入信する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みから犯行に及んだと報じられたため、メディアは旧統一教会に対する批判に明け暮れ、改憲論議が盛り上がる気配はない。さらに旧統一教会やその関連団体と政治家との関係が槍(やり)玉に挙げられ、岸田文雄首相は内閣改造の前倒しを余儀なくされた。
仮に改憲に反対する勢力が、こうした批判に乗じて論議を封じようとしているとすれば無責任極まりないことだ。日米同盟を強化して一層の抑止力向上を図るため、維新はもちろん改憲を党是とする自民は、今こそ機運を高める必要がある。
「全国化」へ問われる力量
馬場氏は共同代表に吉村洋文副代表(大阪府知事)を指名。来春の統一地方選で大阪以外の議員を約300人に倍増させる目標を掲げた。維新は関西以外の地方組織が脆弱(ぜいじゃく)で「全国政党化」に道筋を付けられるか馬場氏の指導力が問われる。



