
安倍晋三元首相が凶弾に倒れて1カ月が過ぎた。ペロシ米下院議長が台湾を訪問し、中国が報復の軍事的威嚇を続けているが、安倍氏も存命であれば7月末に訪台する予定だった。実現すれは首相経験者としては初の訪台となるはずだった。
安倍氏の葬儀の行われた日、気流子も東京・芝の増上寺の山門前で柩車(きゅうしゃ)が来るのを待っていた。その時、黒い喪服に身を包み10人ほどの女性たちがやって来た。花束と中華民国の青天白日旗を手にした台湾の人たちだった。
はっと胸を突かれる思いだった。安倍氏と台湾との深い関係は知っていたが、これほど台湾の人々に愛されていたとは。
安倍氏の訪台計画が5月に台湾で報じられると、中国外務省の汪文斌副報道局長は「日本は中国人民に台湾問題で歴史的な罪を負っており、言動を慎むべきだ」と述べ、訪台に反対する考えを示した。安倍氏銃撃が、このような緊迫した状況の中での事件だったことは頭に入れておく必要があるだろう。
暗殺の1週間前、安倍氏は正式に訪台の招請を受け快諾している。尊敬する李登輝元総統の命日の7月30日に台湾の土を踏む予定だった。
安倍氏と李氏は深い絆で結ばれていた。2017年、小紙記者がインタビューで台北郊外の李氏宅を訪れた際、李氏は短期入院から退院したばかりだった。エントランス近くの部屋にピンク色の蘭の花が飾られ、プレートには「お見舞い 内閣総理大臣安倍晋三」と書かれてあった。



