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「クマはものすごくうまそうにサーモンを食べる。体長80㌢はあるサーモンにかぶりつくとバリッ、バリッと骨が砕ける音が聞こえてくる」――。動物写真家、前川貴行さんの写真集『クマたちの世界』の一節。
米アラスカ中部でのことで、クマはグリズリーだ。その後こう続ける。「夢中になってかぶりつくクマの姿を見ていると、自分もクマになって食べてみたいと、いつも思う」。動物との一体感が作品の特徴だ。
前川さんの写真展「生き物たちの地球」が富士フイルムフォトサロン東京(港区赤坂9の7の3)で開催中(18日まで)。世界各地で撮影してきた野生動物が勢ぞろいしている。入り口を飾るのはアラスカ・ブルックス山脈ノーススロープだ。
雪の山脈と荒涼とした原野の風景。春を迎えるとカリブーの群れが山脈を越えて北へ移動し、ノーススロープで秋まで過ごすという。小型飛行機から撮影したそうだが、寒々として動物の姿が見えない。
「見えませんけども、どこかに動物たちが潜んでいるのです」と前川さん。テーマは動物だけでなく、地球と動物の世界。特に子供たちに見てもらおうと、絶滅の危機度をはじめ解説にも工夫を凝らしている。
北米のバイソンは、かつて6000万頭いたとされるが、1900年代には数百頭まで激減。移住してきたヨーロッパ人によって殺されたからだ。撮影された雪景色の中のバイソンは、人とは何者かと問い掛けているかのようだ。



