
ロシアによるウクライナ侵略が長期化の様相を深める一方、ウクライナの復興計画が欧米を中心に協議されている。
スイス南部ルガノで開かれた国際会議では、復興に向けた行動の原則を盛り込んだ「ルガノ宣言」を採択した。民主主義陣営は結束して支援すべきだ。
露の凍結資産活用も
会議は日米欧など約40カ国に加え、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)などが参加した。ルガノ宣言は、ロシアのウクライナ侵略を強く非難。ウクライナ自身が復興の推進役になるべきだと指摘した上で、復興に当たっては透明性の確保や説明責任、持続可能性などを原則として掲げた。
ウクライナにおける戦況の実態、変化が映像などを通じて報じられる中、ロシアによる侵略は長期間にわたって続くとの分析が一般的だ。依然として最優先課題は侵略をやめさせることである。だからと言ってウクライナ再建の議論が時期尚早ということではない。
会議に対面参加したウクライナのシュミハリ首相は①衛生的な水の確保や崩れた橋の再建など即座に必要な復興②破壊された病院や住居の再建など戦争終結後の速やかな復興③教育や医療、気候変動対策やデジタル化など長期にわたる構造転換――の3段階で構成する復興計画を公表した。必要な財源は7500億㌦(約102兆円)に上るという。
シュミハリ氏は「財源には、戦争を引き起こしたロシアの資産を第一に充てるべきだ」と訴え、対露経済制裁で凍結された新興財閥(オリガルヒ)の資産などの活用を提案した。各国は凍結資産の没収に向けた手続きを急ぐ必要がある。
日本から出席した鈴木貴子外務副大臣は「日本は東日本大震災など度重なる自然災害から復興を成し遂げてきた」と述べた。日本は国際社会と協力し、ウクライナ復興に貢献することが求められる。
一方、ロシア軍はウクライナ東部ルガンスク州とドネツク州を含むドンバス地方を掌握しようとしており、今月に入ってルガンスク州全域の制圧を宣言。今後はドネツク州での攻防が焦点となる。
EUのフォンデアライエン欧州委員長は、会議で「ウクライナは国際法や私たちの価値観を守るために戦っている。彼らの戦いは私たちの戦いでもある」と強調。2月24日の侵略開始以来、EUによる財政支援は62億ユーロ(約8766億円)だとした上で「さらに必要であり、さらに拠出される」と追加支援を約束した。
他国への侵略は国際法違反であり、ロシアの力による一方的な現状変更の試みを容認することはできない。ウクライナのゼレンスキー大統領は2月24日以前の領土を取り戻すことを「勝利と見なす」としている。民主主義陣営はウクライナの勝利に向けた支援も強化すべきだ。
「法の支配」の価値観守れ
日本はロシアだけでなく、沖縄県・尖閣諸島の奪取を狙う中国を牽制(けんせい)するためにも、ウクライナを支援することで「法の支配」の価値観を守らなければならない。



