【上昇気流】(2022年7月12日)

11日、台北の日本台湾交流協会台北事務所を弔問に訪れ、安倍晋三元首相の遺影を見詰める蔡英文総統(総統府提供・時事)

安倍晋三元首相の死を悼む声が世界各地から寄せられている。米国のブリンケン国務長官はアジア歴訪の帰路、予定を変更し弔問に来日した。台湾では総統府に半旗が掲げられ、蔡英文総統が日本台湾交流協会台北事務所を訪れ献花した。

日本の政治家の死が、これほど世界から惜しまれるということはかつてなかった。安倍氏を失って、改めてその存在の大きさを思い知る。

2018年にカナダのシャルルボワで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は「米国第一」を掲げたトランプ米大統領とメルケル独首相ら欧州首脳との対立が浮き彫りになった。

この時、一枚の写真が話題になった。米独両首脳が厳しい表情で対峙(たいじ)する間で安倍氏が困ったような表情で腕を組んでいる。その姿は、何とかこの対立を収め、G7の結束を維持しようという立場の日本を象徴していた。

安倍氏の名前は、海外の政治家だけでなく一般の人にも覚えられた。それは、長く首相を務めたというだけでなく、その容姿、言動、キャラクターに魅力があったからだ。特に、16年リオデジャネイロ五輪閉会式での「安倍マリオ」の印象が強いだろう。

とはいえ、政治家からの評価は自(おの)ずと観点が異なる。評価の理由を一言で言えば、スケールの大きさということではないか。「自由で開かれたインド太平洋」構想がその代表だ。参院選を勝利した岸田文雄首相には、同じようにスケールの大きな外交を望みたい。