先月就任した尹錫悦大統領の意向に沿い、大統領府がそれまで故宮・景福宮のすぐ北にあった青瓦台から、南に約6・5キロ行った先にある国防省の建物に移転した。ここはソウル市のほぼ中央に位置する龍山区にあるが、龍山という名の由来は南側を流れる漢江に2匹の龍が現れたという記録にあるとも言われる。尹氏が国をよく治め、外敵から国を守る龍のような強さを発揮するなら、後に移転は成功だったと評価されるかもしれない。
ところで、龍山は日本ゆかりの地としても知られる。戦前の統治期には日本軍の兵営が置かれ、これが後の広大な在韓米軍敷地の基になったほか、日本人の居住が集中して開発が急速に進み、現在も当時造られた建造物の一部が残る。戦後は日本から派遣された公務員や企業の駐在員たちとその家族が、漢江に沿って形成された「東部二村洞」と呼ばれる地域に住むようになった。そのため、ここは日本人村と呼ばれる。
筆者は以前、その日本人村の横断歩道で信号待ちをしている日本のママ友たちが日本語で談笑していると、すぐ横を通りかかった中年の韓国人女性から「シックロウォ(うるさい)!」と言われた場面に出くわしたことがある。そうかと思えば、日本人村にある静かなカフェで日本語で長時間会話を交わしても、周りにいる若者たちは誰一人として気にも留めない様子だったこともあった。ゆかりの地・龍山で見た韓国の「二つの顔」だ。(U)



