
臨床宗教師の提唱者である岡部健医師(東北大学医学部臨床教授、1950年~2012年)の半生をつづった映画『まだ見ぬ夢に向かって』(2019年)が今、宮城県仙台市のせんだいメディアテークで上映中だ(17日まで)。
臨床宗教師とは、被災地や病院などで人々の苦悩や悲嘆に対して宗教的なケアをする、宗派を超えた宗教者のことだ。欧米ではチャプレンと呼ばれ、ごく当たり前の活動となっている。
しかし日本では、特に戦後において無宗教であることが近代人の証であると勘違いしてしまった。岡部氏はその最たるものが医療現場であり、終末期医療を難しくしていると考えるようになる。
その終末期の“道しるべ”を示すことができるのは、やはり宗教的な知恵と経験を持つ宗教者であるとし、宗派を超えた宗教者を医療チームに加えることを目指す。やがて来る超多死社会を見据え、また東日本大震災の経験を踏まえて、そのような宗教者のための養成講座を2012年、東北大学に立ち上げた。
その際、日本人の宗教性にふさわしい日本型チャプレンが必要であろうと考えた。在宅で安らかに最期を迎えた人々の多くが、亡くなった近しい人か配偶者が夢や幻想に現れて、病む者に語り掛ける「お迎え」を経験していることが多いことに気がつき、自宅で死ぬという日本人本来の死の迎え方を復活させた。
その活動に改めて注目したい。
(荘)



