ロシア産石油禁輸 中国利する可能性 EU通商トップが指摘

米国のガソリンスタンド=2022年3月7日(UPI)

【パリ安倍雅信】欧州連合(EU)が先月末、ロシア産石油の輸入を年末までに最大90%禁止する方針を決めたことについて、EUの執行機関・欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)が1日、中国を利する可能性が高いとの見解を示した。EUの制裁強化によって、石油の新たな販売先を見つける必要に迫られたロシアの弱みを中国が利用するとの見方だ。

 米ルームバーグ通信の取材に応じたドムブロフスキス氏は、早急に買い手確保を必要とするロシアの弱みを中国は好機と捉えると指摘。ロシアは現在、中国に石油を通常の35%引きで販売しているとし、「中国がこうした状況をうまく利用しつつある」との見方を示した。

 EUは5月30日の臨時首脳会議で、対ロシア制裁第6弾としてロシア産石油の輸入について、当面は陸上パイプライン経由の輸入分を禁輸対象から除外し、海上輸送分のみ禁じるとする妥協案で合意した。結果的に年内にロシア産石油の輸入は90%削減される。

 中国やインドは、すでにロシアから安価な原油を積極的に輸入しているが、欧州輸出分を現時点で両国が短期間に引き受けるのは技術的に難しいと専門家はみている。ただ、中国が好機と捉え、さらに安価で交渉し、買い増す可能性はある。いずれにせよ、年末までに中国とインドが欧州を抜いてロシア産石油の最大の買い手になるのは確実とみられ、ロシアの中国経済依存度は一段高まることになる。