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生きづらさや困難を抱える人にアートを通じて心の支援をするNPO法人「Wonder Art(ワンダーアート)」(宮城県仙台市)。障碍(しょうがい)のある全国の子供を対象に病院や特別支援学校で活動を展開している。さまざまなアートプロジェクトを通じ、一人一人の心や体の特性に向き合って自由な表現の場を提供。今年5月には、就労継続支援B型(★参照)の「ワンダーワーカーズ」も始めた。(市原幸彦)
自由で豊かな表現の場を提供
同法人の代表理事でホスピタルアーティストの高橋雅子さん(65、仙台市出身)によれば「特に子供にとってアートが持つ意味は重要です。病気や難病の子供は受け身でいることがいつの間にか当たり前になってしまう。そうした日常にアートが加わると、多くの材料の中から何を使うか、どんな色で何を描くか、作品をどう展示するか、多くの選択肢が生まれる。子供たちが想像力を働かせるきっかけとなる」と語る。
同法人では多彩なプロジェクトを展開している。願いを込めたマスコット「ハッピードール」を作って楽しむハッピードールプロジェクト。「カラフルで温かみのある布を使っておしゃべりしながら手を動かすと、会話も弾み、気持ちがリラックスします」(高橋さん)と、子供から高齢者まで、年代も性別も問わず誰でも参加できることを強調する。
ハッピーペインティングは、皆で一緒に大きなキャンバスに絵を描く。はだしになり、手も足も絵画道具として使い、色とりどりの絵の具でいっぱいにして思い切り“色遊び”を楽しむ。
アートリノベーションは、自治体と地域住民の協力の下、老朽化した公園の遊具や外壁をリデザインする。ほかに、夏休みを利用した、自然物を採集してのアート制作や、東北各地の子供たちが交流するアートキャンプなどがある。
その他、季節や対象に合わせ、また訪問先や連携団体のリクエストに応じてカスタマイズした「スペシャルプロジェクト」を実施している。これまでに、地域のお祭りや、クリスマス会等の四季折々の催し、地元商店街のイベント等で、多様なスペシャルプロジェクトを届けてきた。
高橋さんは、米国州立ウェスタン・ミシガン大学芸術学部卒業後、東京を中心に美術館運営に携わりながら、平成16年から患者が主体となる独自のホスピタルアート活動を全国各地と世界各地の病院で展開。知的障碍児施設でのアートプログラムや、病院での精神科作業療法プログラム、重度心身障碍児者施設でのアートイベントなど、要望に応じた創作・表現活動の実践経験を重ねてきた。
平成23年3月、東日本大震災の発生直後に、任意団体「アーツ・フォー・ホープ」を発足。岩手・宮城・福島・熊本の各地で活動を行ってきた。参加者から「アートで救われた」「明日を生きる活力をもらった」との声が上がった。
そんな中で、障碍児者のフォローが後手に回る各地の深刻な状況を知り、平成28年、子供たちのアトリエ「ワンダーアートスタジオ」を仙台市にオープン。子供から大人まで、障碍の有無を超えた約40人のアーティストが、自由に伸び伸びと創作活動を行っている。講座は反響を呼び、自閉症スペクトラムの息子を通わせる多賀城市の女性は「スタジオでの自由な活動が刺激になり、表現が豊かになった」と感想を寄せている。
令和2年、中国や欧米で新型コロナウイルス感染が爆発的に広がり、「いずれ日本もそうなる」と移転を前倒しして、本部を東京から仙台市に移し、法人化。被災3県などでこれまで活動に参加した市民は延べ10万人を超える。
そして今年5月、就労継続支援B型の「ワンダーワーカーズ」を始めた。午前中はワークタイム、午後は表現活動(作品制作)など、一人ひとりのペースで活躍できるアートの仕事場だ。一般就労や雇用契約がある就労継続支援A型(★参照)への移行に必要なスキルの習得を目指す。
高橋さんは「感情が動き、生きる楽しみを持てるようになること。そのきっかけがない人に対し、支えになるようなメッセージを伝えたい。これからもアートが人に与える感動や希望の力を信じ、地域にとって必要な支援を続けていきたい」と語っている。
★就労継続支援とは
【就労継続支援A型】一般企業などに就職が難しい障害や難病を抱えている方に働き場所を提供する目的で定められた制度。雇用契約を結びながら作業(仕事)に従事することができ、その対価として給与をもらうことができる。社会保険や労働関係の法令も一般労働と同様に適用される。
【就労継続支援B型】年齢や体力などの面で雇用契約を結んで働くことが困難な方が、軽作業などの就労訓練を行うことができる福祉サービス。作業の対価である工賃をもらいながら、自分のペースで働くことができる。



