【社説】北のミサイル 日米韓が連携して対処せよ

北朝鮮が東部の咸鏡南道・新浦沖の海上から日本海に向け、短距離の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)1発を発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下した。

北朝鮮によるミサイル発射は今月に入って2回目、今年14回目となる。今回の発射は、近く発足する韓国の尹錫悦新政権を牽制(けんせい)するためとみていい。日米韓3カ国が連携して対処する必要がある。

 今月中に核実験強行か

北朝鮮がSLBMを発射するのは昨年10月以来。韓国軍合同参謀本部は今回のミサイルについて、試験用の施設ではなく、潜水艦から発射したと分析している。最高高度は約50㌔で、600㌔程度飛んだという。

岸信夫防衛相は「わが国、地域および国際社会の平和と安全を脅かすもので、断じて容認できない。国連安全保障理事会の決議違反であり、強く非難する」と述べた。北朝鮮は今月4日にも弾道ミサイルを発射したばかりであり、挑発の激化に十分な警戒を要する。

北朝鮮は2018年4月に核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の凍結を表明。しかし今年1月の政治局会議で再開を示唆し、3月にはICBM「火星17」の発射実験を成功させた。米本土を射程に入れるとみられており、北朝鮮の脅威は増大している。

今後懸念されるのは、核実験の強行だ。今月10日の尹政権発足と21日の米韓首脳会談の間に行われるとの見方もある。

国際社会がロシアによるウクライナ侵略に対応する中、その間隙を突いてこうした動きに出ることは卑劣極まりない。ただ核兵器を手放したウクライナがロシアに蹂躙(じゅうりん)されている状況を目の当たりにした北朝鮮が、核・ミサイル開発を加速させることは想像に難くない。国際社会は対北制裁の実効性を高めるべきだ。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は先月行われた「朝鮮人民革命軍」創設90年記念の軍事パレードで、核兵器の「基本的使命」は「戦争抑止」としつつ「国の根本的利益を奪おうとするなら、第2の使命を決行せざるを得ない」と演説した。核の先制使用を辞さないと示唆し、日米韓を威嚇した形だ。

尹次期大統領は北朝鮮に対し、融和政策を進めた文在寅大統領と違って厳しい姿勢を示している。先月訪米した尹氏の代表団は、北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」を目指す考えを表明したほか、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」で設置された作業部会に参加する立場も明らかにした。韓国には日米をはじめとする民主主義国家との連携を深めることが求められる。

 日韓関係改善を急げ

林芳正外相は尹氏の大統領就任式に岸田文雄首相の特使として出席し、尹氏との会談も行う方向だ。

日韓両国間には元徴用工や慰安婦の問題など懸案が山積している。懸案を解決できず関係冷却化が続くようであれば、北朝鮮の思うつぼだ。北朝鮮の核・ミサイル開発に対処するため、日韓関係改善と日米韓の連携強化を急がなければならない。