「集団殺害」で停戦遠のく ロシア軍関与、一層濃厚に

ウクライナは裁判要求

4日、キーウ(キエフ)近郊ブチャを訪れたウクライナのゼレンスキー大統領(左から二人目)(AFP時事))

【イスタンブール時事】ロシア軍は5日、ウクライナ北部で多くの民間人を殺害したと国際社会の非難が高まる中、主に東部で作戦を続行した。ウクライナ政府は「ロシアによるジェノサイド(集団殺害)」(ゼレンスキー大統領)に強く反発。両国はウクライナの「中立化」に向けた安全を保証する仕組みの構築などをめぐって停戦交渉を断続的に行っているが、新たに対立の火種を抱え込んだ形で、早期の戦闘終結は困難だ。

首都キーウ(キエフ)近郊ブチャなどでロシア軍が撤収後、民間人とみられる遺体が多数見つかったことについて、ロシア側が関与したという見方が一層濃厚となっている。ウクライナ国防省は「戦争犯罪に加担した」として、多数のロシア将兵の名前などをホームページ上に公開し、法廷での裁きにかけるよう呼び掛けている。

AFP通信によると、米民間企業マクサー・テクノロジーズは4日、3月半ばの衛星画像に、ブチャの道路上やその脇に民間人とみられる複数の遺体が横たわっている様子が写っていると指摘した。ロシアは民間人殺害を否定し、現場の惨状について「3月30日のロシア撤収後にウクライナ側が仕掛けた演出」と主張するが、衛星画像の分析結果と矛盾する。

ウクライナは現時点でロシアとの交渉を継続する構えだが、同時にロシア側の責任追及も訴えている。対話による歩み寄りは見通せない状況だ。ロイター通信によれば、ゼレンスキー氏は交渉が「ウクライナにとって唯一の道だ」と述べる一方、以前は意欲的だったロシアのプーチン大統領との直接会談は「行われないかもしれない」という認識を示した。

一方、英国防省は5日付の戦況報告で、ロシア軍が撤収を進めるウクライナ北部では、なお小規模な戦闘が続くもようだが、「ウクライナ軍が主要な地域を奪還した」と指摘。撤収したロシア軍は東部に再展開する見通しで「その前に装備の大幅な刷新が必要とみられる」と分析した。

キーウ制圧に失敗したロシア軍は、東部の親ロシア派武装勢力の支配地域拡大を目指しているとされる。一部を親露派に支配されている東部ルガンスク州のガイダイ知事は4日、ロシア軍が集結する動きを見せ、「大規模な突破攻撃を準備している」として、住民に避難を呼び掛けた。