首都郊外で大規模虐殺の疑い 撤収時に地雷設置か ロシア軍

ウクライナ「キーウ州解放」主張

2日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)のロシア軍から奪還した地域で、集合住宅脇に並ぶ住民の墓(EPA時事)

【イスタンブール時事】ロシア軍の撤退でウクライナ側が奪還した首都キーウ(キエフ)郊外のブチャで、民間人とみられる多くの遺体が見つかった。ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、米CBSテレビのインタビューで「実のところ、これは虐殺だ」と述べた。ロシア軍が大規模な殺害を行った可能性があり、ウクライナ当局が現地の被害状況の把握を急いでいる。

クレバ外相は3日「虐殺は故意で、ロシアはできるだけ多くのウクライナ人を殺害しようとしている」と述べ、国際社会に対露制裁の強化を求めた。ゼレンスキー氏はこれより先、ロシア軍がブチャを含む北部キーウ州などからの撤収に際し「地雷を仕掛けている」と訴え、退避した人々が戻るのも困難という見方を示した。

キーウの北西に位置するブチャは、過去1カ月にわたってロシア軍が占拠。ウクライナ側が1日までに支配権を回復したとされる。ウクライナ国防省高官は2日、キーウ州の「全域が解放された」と主張した。

AFP通信によると、ブチャでは一つの通りで少なくとも20の遺体が確認されるなど、凄惨(せいさん)な状況。いずれも民間人らしき服装で、手を縛られたままの遺体もあった。外見や状況から、何日間も放置されていたもようという。ブチャの市長は2日、「これまでに280の遺体を集団埋葬した」と話した。

犠牲者らがどのような形で命を落としたかは不明だが、ロシア軍が何らかの形で関与したとみられる。非戦闘員を意図的に狙った攻撃は、戦争犯罪行為に該当する可能性がある。

ロイター通信によれば、ウクライナ当局はロシアが3月29日に北部のキーウやチェルニヒウでの作戦の「大幅な縮小」を発表して以降、30以上の町や村を奪還したと表明した。チェルニヒウ州知事は、ロシア軍が去った州都チェルニヒウ周辺が「地雷だらけだ」と主張した。

南部から東部にかけての地域ではロシア軍の攻撃が続き、緊張が高まっている。中部ポルタワ州で石油精製所が破壊され、南部オデッサ州でも爆発があった。人道危機が深刻化する南東部マリウポリでは、住民退避の試みが続いた。

一方、ロシアとウクライナの停戦交渉でウクライナ代表団を率いるアラハミア最高会議(国会)議員は現地メディアに、交渉妥結に向けた両国の首脳会談が、恐らくトルコで行われるとの見方を示した。ただ、ロシア側は早期の首脳会談実現に否定的な立場を取っている。