【社説】わいせつ教員 新法を大きな“抑止力”に

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わいせつ教員対策を強化する新法「教員による児童生徒性暴力防止法」が施行された。

児童・生徒らに対するわいせつ行為(性暴力)で教員免許を失効した元教員が、再び教壇に立つことを極めて難しくする「再授与審査」が新法の柱だ。来年度に照会するためのデータベースを稼働し、2025年度から厳しくされた審査が実施される見通しだ。

免許再交付審査を厳格化

文部科学省の21年度調査によると、児童や生徒らへの性犯罪や性暴力、セクハラ行為で20年度に懲戒処分を受けた全国の公立学校の教員は、前年度より73人減ったものの200人に上った。8年連続で200人以上となっている。数が減らず、高止まりしたままだ。強制わいせつや盗撮といった「性犯罪・性暴力」で処分されたのは133人、不快にさせる性的な言動などの「セクハラ行為」で処分されたのは67人だったという。

こうしたわいせつ教員が全国87万人超の公立の小中高職員数に占める割合は0・02~0・03%ではあるが、被害に遭った児童・生徒にとっては大きな問題だ。末松信介文科相は「児童・生徒を性暴力の犠牲者とさせない断固たる決意で取り組む」と表明している。

これまでは性暴力で懲戒免職・解雇となり、教職免許が失効となっても、3年たてば再取得の道が開かれていた。新法では再交付の可否を判断する「再授与審査会」がデータベースでのチェックと共に導入された。

わいせつ教員の手口も巧妙だ。「指導」や「面談」と称して自ら勤務する学校の児童・生徒や卒業生を対象にしていたというから質が悪い。

「恥ずかしい」「恐ろしい」と被害を訴え出られない子供の心を踏み躙ることは許されない。トラウマになって幸せな結婚ができないなど、成長してから苦しむケースも多くあるという。また「優秀な先生だから、処分されては困る」と、被害者やその保護者が学校側や周囲の保護者から口止めされるケースもある。調査が“おざなり”で結果に出るのは氷山の一角だという厳しい指摘もある。

各都道府県教育委員会は「再授与審査」で、医師の診断書、更生した証明書などの書類を提出させ、全会一致を原則としている。また、再交付された場合、二度と性暴力を行わないことの立証責任を負わせる。新法に基づく国の指針には、再び被害が発生すれば「損害賠償の責任を問われることもあり得る」と明記している。

さらに新法は、児童や生徒からの相談に応じた教員らは「犯罪の疑いがあると思われる時は速やかに警察に通報」し、「犯罪があると思われる時は告発しなければならない」と定めている。大きな“抑止力”になることを期待したい。

被害者のケアを十分に

それとともに、教員を目指す学生や教員研修会の参加者に、わいせつ被害者の心身の後遺症やトラウマの苦しみも知ってもらう必要がある。被害を受けた児童・生徒の精神的ケアを担当するスクールカウンセラーを充実させ、十分な措置も講じてもらいたい。